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仙台高等裁判所 昭和33年(ネ)658号 判決

盛岡市葺手町一八八番地

控訴人

佐々木正蔵

被控訴人

右代表者、法務大臣

愛知揆一

右指定代理人、検事

滝田薫

同、

法務事務官 村上憲司

同市上田中堰一九番地の二

被控訴人

盛岡税務署長

山根軍治

右指定代理人

大蔵事務官

鈴木貞圀

右当事者間の贈与税申告無効確認等請求控訴事件について、当裁判所は、昭和三五年四月一三日口頭弁論を終結し、次のとおり判決する。

主文

本件控訴はいずれもこれを棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、本件口頭弁論期日に出頭しないが、その提出にかかり陳述したものとみなした控訴状によると、「原判決を取り消す。被控訴人国との間で控訴人が原判決別紙目録記載の不動産について昭和三一年二月二八日被控訴人盛岡税務署長になしたとする申告による昭和三〇年度分贈与税金一六五、五二〇円の納税債務の存在しないことを確認する。被控訴人盛岡税務署長が昭和三二年六月一五日右不動産についてなした滞納処分はこれを取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求めるというのであり、被控訴人ら代理人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張並びに証拠の提出、援用及び認否は、すべて原判決の事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

理由

当裁判所は、次のとおり附加するほかは、原審と事実の確定及び法律判断を同じくするから、原判決理由の記載をここに引用する。

控訴人は、昭和三〇年一〇月二一日、佐々木三蔵に対し、本件贈与に対する謝礼ないしは生活補助金の意味で、金五万円を交付したと主張するが、原審証人佐々木三蔵の証言によつてその成立を認め得る甲第五号証、原本の存在並びにその成立につき争いのない同第一一号証、前記証人の証言及び原審における控訴人本人尋問の結果中控訴人の右主張に副う部分は、同証人の証言及び控訴人本人尋問の結果(各一部)によつて認められる、控訴人が三蔵の次男であつて、両子が親子関係にあること、控訴人と三蔵とは本件贈与時以前からひき続き本件贈与家屋に同居し、かつ、その生計を同じくしていること及び当時控訴人はマッサージ師として一箇月一万円位の収入しか得ていなかつたこと並に弁論の全趣旨に照らして、にわかに信用できないし、他に控訴人の右主張を認めしめるに足りる証拠がないから、このことあるを前提として贈与税の申告につき要素の錯誤があつたとする控訴人の主張は理由がない。

そうすると、控訴人の被控訴人らに対する請求は、いずれも失当であるからこれを棄却すべく、これと同趣旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三八四条、第八九条にしたがつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鳥羽久五郎 裁判官 畠沢喜一 裁判官 桑原宗朝)

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